前後編に分かれる映画は、なぜ成功しないのか?

最近邦画で流行の前後編映画は、なぜ成功しないのかを考えてみました。

前後編に分かれる映画は、なぜ成功しないのか?

近年上映されている邦画には、前後編など複数回に分割した映画が目立つ。
近年?洋画邦画を問わず、過去作にも多く有るじゃないか?
そう思われる方も多いと思うが、少し事情が違う。

一つのストーリーを分割させる映画としては、洋画の代表作は[スターウォーズ]。
邦画の代表は初代の[機動戦士ガンダム]だろうと、筆者は考えます。
それぞれ7部構成3部構成に別れますが、これらは公開当時に続編の予定が立っていなかった。
動員数が良かった為に、続編が公開決定しました。
事実公開当時に、一作目である証の[PART1]表記は有りませんでした。

邦画に限定して言えば、複数構成を初めから打ち出したのは、[デスノート]が最初でしょう。
この[デスノート]はそれなりに成功を収め、第2作の[ラストネーム]。
第3作の[チェンジザワールド]は、前作を超える興行収益を上げています。
未だに完結の傾向が見えない、[新劇場版 新世紀エヴァンゲリオン]も同様です。
これらだけを見ると、複数回構成は成功パターンに見えますが、近年の代表作。
[るろうに剣心]や[のだめカンタービレ]。
[SP]や[SPEC]等、前編公開時に大きく話題になり、興行収益もトップクラスであるにかかわらず、
後編の興行収益は軒並みダウン。
2割~3割程度動員数が少なく成っています。
これらが意味する物はなんでしょうか?

経済のセオリーや、観客の心理としては、前編を見たら後編も見たくなるのは道理です。
レンタルや販売作品、TV放送があるので、後編は前編よりも動員数が増えるのが、通常考える経過です。
後編の方が興行成績が下がるのはありえない。
そう考えるゆえに、ビジネス面の考え方から、これらは2部以上の構成になりました。
本来であれば上映時間が長くとも、1部構成にした方が観客の満足度も高いのですが、
一粒で2度おいしい的な考えが、こういった構成を生んだと言えます。

2時間以上の上映だとダレテしまう・・・その様なご意見も耳にした事はありますが、
過去には2009年の[沈まぬ太陽]や[ベン・ハー]の様に、3時間以上の上映時間を持つ映画は多くありますし、
1980年代は同時上映でトータル3時間以上の映画は、スタンダードでした。
これらが示すように、ロングタイムではダレルのではなく、製作者や興行上の都合で複数回に分けられたのです。

映画離れ、劇場離れが起きた為に、こういった現象が起きているかと思えば、それも違います。
実際に前編の集客は良いのですから。

話を戻しますが、なぜ後編の集客が悪いのでしょうか?
総じて言えるのは前編が駄作で、後編に期待が持てない。
後編はレンタルやTVで充分と考えられてしまうからです。
後編の興行収入の堕ち幅が大きい程、この傾向が強かったと言えます。
ですが、総ての映画が元々駄作だった訳ではありません。
演者や監督、原作等が、国際的にも評価が高い作品も多いからです。
評価が高いのになぜ?そう考えますよね。

本来これ程の尺(時間の長さ)を必要としないのに、前項編に分けた為、間延びするダレた映画になってしまった。
そう考えるのが筋だと思います。
本来3時間で済む映画を4時間にすれば、ダレルのは道理です。
逆に2時間で詰め込むあまり、駄作になった映画も少なくありません。
ストーリーには、ストーリーに応じた尺が有るのに、製作者都合で駄作に変えてしまったのです。

熱心なファンにだけではなく、映画という物は、その映画を見る人だけを配慮する、エンターティナー性も大事です。
また、本来そう有るべきです。

2015年も前後編で期待される映画がいくつかあります。
昨年からの繋がりの[寄生獣]、[進撃の巨人 ATTACK ON TITAN]や[ソロモンの偽証]もそうでしょう。
これらが単作としても、繋がりを持つ映画としても、完成度が高く楽しめる作品で有る事を願います。

昨今ハリウッドを初め、過去作の焼き直しが目立ちます。
前出の[スターウォーズ]もリメイクが決定しました。
リメイク作品・・・言葉としては綺麗ですが、期待される新作やオリジナル作品が作れなくなった結果とも言えます。
映画や劇場離れは、不景気だけが問題ではありません。
[アナと雪の女王]の様に、DVD・BDの発売やレンタルが上映期間中に始まったにもかかわらず、
安定した大型動員を持続した作品も有るのですから。

映画関係者には、映画離れを作ったのは自分達であると理解した上で、今後の作品を作って頂きたいと願い、
今後の映画界に期待したいものです。

佐藤沙緒理のあやかしの種